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Restaurant Gualtiero Marchesi

ミラノ出身のモダン・イタリア料理の先駆者、グアルティエーロ・マルケージ1930年に生まれ、両親が経営するホテル・レストラン『メルカートホテル』で初めてキッチンに立つ。17歳の時に学校を辞めスイスのサンモリッツに移った後、パリの『ルドワイヤン』、ディジョンの『ル・シャポールージュ』、そしてロアンヌの『トロアグロ』にて修行を積む。その独自でアバンギャルドな料理が注目され、最初に出したレストランはオープンから一年以内ミシュランの星を取り、その後三ツ星を獲得するも、2008年には星を返還したとして話題になった。約三千もの世界で最も著名なシェフが集うユーロ・トックの創立者の一人でもあり、自身は二年間国際代表を務めた。2011年には有名シェフで初めてマクドナルドの二つのハンバーガーとデザートを手掛け、2015年に行われたミラノ万博ではシェフ・アンバサダーに選ばれる。イタリア料理のキングと呼ばれ、これまでの伝統的な料理を、ワンランク上の洗練されたモダン・イタリアンへと昇華させた。

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Gualtiero Marchesi – Plates

ワカペディアの見るグアルティエーロ・マルケージ

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Gualtiero Marchesi

グアルティエーロ・マルケージは、ワカペディアがこれまでインタビューした中でも、サラワカが小さい頃から一番よく知っている人だ。6歳の時に、初めて彼のレストランへ行った時のことをよく覚えている。ホテルの中にあるそのレストランでは、庭に鶏やうさぎが走り回っていて、ベイビー・サラワカにとってはすごく楽しい場所だった。食事が始まり、出されたうさぎを食べていると『これはね、君がさっき追いかけてたうさぎだよ』とグアルティエーロおじいちゃんに言われ、思わず凍りついた。『なんて感じの悪いおじいちゃんなんだ!』と思い、その後運ばれてきた鳩にかぶりつくと、今度は『これはね、(ミラノにある有名な大聖堂)ドゥオーモの前にいた鳩だよ』と言ったのだった。この時から彼が、サラワカにとって、いじわるな悪役おじいちゃんとなったのは言うまでもない。ところがしばらくして再び両親と彼のレストランへ行ったとき、彼の有名な一品でもある、金箔の乗ったミラノ風リゾットを初めて食べた。あまりの美味しさに、なんて美味しいんだ!と幼心ながらに感動したベイビー・サラワカ。いつも家で言うように無心で『おかわり!』と言うと、グアルティエーロおじいちゃんは「はははは!良い食べっぷりだ!いっぱい食べて大きくなるんだよ。」と優しい笑顔で、今度は金箔が乗ったイカ墨のリゾットを出してくれた。これがきっかけで単純なサラワカは『このおじいちゃん、悪い人じゃないんだ!』 と思うようになった。大学を卒業した時も、卒業祝いにケーキを作ってくれたりと、まるで孫のような存在なのだ。四年ぶりに彼に会ってインタビューをした時、改めて彼の音楽やアートへの思いを聞かせもらえて、すごくよかったとサラワカは思った。

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Gualtiero Marchesi – Plates

サラワカ:やっほ~ マルケージおじいちゃん!お久しぶりです!今日はちょっとおじいちゃんのお話を聞きにきました!

グアルティエーロ:わたしの話かい?先週85歳になったから校長先生の話みたいに長くなってしまうけど、いいのかい?(笑)

サラワカ:えっと・・・じゃあ、短編 バージョン でお願いします!(笑)

グアルティエーロ:わたしにはね、とても素晴らしい両親がいたんだよ。母はとても優しくてエレガントなマダムで、父は芸術や文学、舞台芸術が大好きな人でね。二人にはとても良い影響を与えてもらったよ。アインシュタインの名言、『私の学習を妨げた唯一のものは、私が受けた教育である。』って言葉がとても好きなんだ。まずは覚える事を覚えないといけないのだ。彼ら達は本当に私に色々教えてくれた。ただの説教ではなく、大切な経験をね。だが、母はひとつだけ小さな間違えをしたんだ。私は昔から絵を描くのが得意だったんだが、母は私を芸術学校に入学させるかわりにエンジニア系の専門学校に私を入学させたんだ。落第もしたし、散々な結果だったよ(笑)

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Piero Manzoni – Artist’s Shit

サラワカ:え?!私も落第生だよ!仲間だね(笑)

グアルティエーロ:でもな 、サラ。私の経験上、最初が劣等生ならば将来は優等生だ!間違いが経験を積んでいって、色々覚えて行くのだから(笑)

サラワカ:そうだね!

グアルティエーロ:落第した後、私はサンモリッツニあるホテルの学校、クルムに行くことになった、そこで私はホテル業に携わりたいと思ったんだ。その後、ルチェルナというドイツ語圏スイスにある学校でまず語学を学び、料理法を勉強したんだ。昔から美術が好きでねえ、よくポモドーロマンゾーニタディーニ達と朝の4時まで飲んでいたもんだよ。

サラワカ:ええええ!ポモドーロとかマンゾーニって、あの超有名なイタリアンアーティスト達?!

グアルティエーロ:そうさ。父親からも奴らからも、本当に良い刺激をもらったものさ。実はな、ピアノだって習った事があるんだぞ。クラッシック音楽は大好物だ!(笑)

サラワカ:サラもだよ!私もミラノ音楽院に行ってたんだよ!2年間だけだけど(笑)

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Gualtiero Marchesi – Plates

グアルティエーロ:それはとても良い経験だっただろ?残念ながらやめてしまったが、未だによく聞きに行くよ。なんたって私の妻、アントニエッタはピアニストだからな!昔から色々な芸術に興味を持っていたが、やはり私には料理が1番だ。100%自分の力を注いださ。前までオートキュイジーヌはホテルの中にあるレストランばかりだっが、フランスのヌーベルキュイジーヌが確立されてから、シェフ達は自分だけのレストランを持つようになったんだ。メルカンテホテルのレストランで修行したときは、トップシェフに囲まれて、沢山学んだものだ。おかげさまでフェリーニヴィスコンティ監督など、素晴らしい客がいつも私のレストランに来てくれたよ。

サラワカ:イタリアの代表的アーティストだけじゃなくて、監督まで?!さすが、イタリアン・シェフのキングだね!ずっとイタリアで料理をやってきたの?

グアルティエーロ:いや、38歳のときに本物の料理ってのを学ぶためにパリルドワイヤンディジョンル・シャポールージュ、そしてロアンヌトロアグロに行って修行もしたよ。フランスの偉大なシェフ達がいる場所で経験を重ねた後、さぁ、そろそろ次へのステップに行こうと感じたんだ。 料理の要が何かわかったんだ。

サラワカ:それは一体何だったの?

グアルティエーロ:ベースをどう覚えるかという事だな。例えば、火の加減と鍋の温度の調整をしっかりと覚えると、料理を失敗する事は難しくなるとかだな。偉大な指揮者だったベーラ・バルトークは「即興するには、その事柄への知識が求められる」と言った。確かにそれは本当だ。ミスをしないようにするには、その『事柄』をよく知らないといけないんだ。日本人である君なんかは良く知っていると思うが、日本人は物を大切にする。最後まで使い切る事をよく心得ている。君達は本当に素晴らしい文化を持っているよ。昔、私の友人が日本の領事館に誘われて日本に行った事があったのだが、その時に彼は日本からわざわざ電話をかけてきたんだ。

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Gualtiero Marchesi – Plates

サラワカ:どんな内容の電話だったの?

グアルティエーロ:「おい!グアルティエーロ!俺が今何を食っているか分かるか?80キロのマグロの背骨だぞ!マグロのうまい部分を食べるために、脊椎の中をかっぽじってんだ!」これこそが物を知り着く事だ。本当に君達日本人は驚かされるよ。

サラワカ:本当に日本の食文化ってすごいよね!あっぱれ日本!ところで、どうしてあの誰もが欲しがるミシュランの星を返還したの?

グアルティエーロ:彼ら達の評価の仕方がどうも納得いかなくなってね。『科学は客観的で、料理は主観的な物である』という言葉を信じているんだよ。料理の世界だけではなく、美術の世界や音楽の世界でもそうだ。そういう考え方をしていると、次第に評価ということに興味がなくなってくる。味に完璧な評価を出すのは、不可能な事なんだ。考えてごらん、私が同じ物を何度作ったとしても、毎回違うんだぞ?全部が違うように美味しい。私がただ老いていっているのではなくて、違うように年を取っているだけのようにね(笑)見方と評価の違いってことだな。

サラワカ:じゃあ今日は、イタリアの古典的な料理を、よりインナーナショナルに、より新しく再生させたということでワカペディアの星を差し上げましょう!違う見方と評価の仕方でね(笑)

グアルティエーロ:その星は、ありがたく頂くよ(笑)時代は変わり、料理も変わっていくもんだ。だがなサラ、自分が一番美味しいと思う料理は、女の作る料理だ。なぜかというと女性は愛を込めて料理をするからだ。男の料理ってのは、単なるメンタル・マスターベーションだ!

サラワカ:あはははは!それとってもわかる気がする!!ところで、『地球に食料を、生命にエネルギーを』がテーマになっている2015年ミラノ万博シェフ・アンバサダーに選ばれたグアルティエーロ・マルケージ氏。ミラノ万博について一言お願いします!

グアルティエーロ:ん~、とっても心配だよ(笑)自分の国の事はよくわかっているからね。だが、マッテオ・レンツィ首相「イタリアの良い所を世界にみてもらうために、イタリアは全 力を尽くすだろう。」という言葉を聞いた時には、敬意を抱いたよ。

サラワカ: ははははは!面白いジョーク!おっと失礼・・・。でも私も心からこのミラノ万博が開催される6ヶ月間が、楽しみで仕方ないよ!

グアルティエーロ:うむ。イタリアの料理の凄さを世界中に見てもらわないとな!あの偉大なフランスのシェフ、ポール・ボキューズ「イタリアのシェフ達が自国の産物とレシピの素晴らしさに気づいた時、フランス料理は衰退だろう」と言ったんだ。イタリア料理の真の素晴らしさをしっかりと世界に伝えないと行けない気がするよ。

サラワカ:・・・とってもフランス人らしい言葉だね(笑)でも、そのフレーズはずばり真実だろうね。今日は本当に色々な事を話してくれてありがとう!短くなるはずが、1時間半になっちゃったね(笑)でもすっごく色々な事が聞けて勉強になったよ!校長先生の話より断然面白かったし。それじゃあ最後のお決まりの質問!キスしてちょーだい!

グアルティエーロ:もちろんだよ!この歳になると唯一の楽しみになるからね~(笑)

サラワカ:あははは!ウソだ~!自分のギャラリーが開けるくらい、こんなに沢山のアーティストから誕生日プレゼントを貰ってるんだから!

グアルティエーロ:自分のギャラリーか・・・それは素晴らしいアイデアだ!!(笑)

彼の唯一の楽しみだというキスは、サラワカのほっぺたに落ちた。

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Sara Waka – Gualtiero Marchesi

Description & Interview: Sara Waka

Edited by:Yuliette