4月、満開の桜でピンク色に染まる古都京都。ちょうどこの時期は、伝統的な着物シーズンから、現代的なスタイルへと衣替えを行うシーズンでもある。何のことかというと、芸術の都でもある京都はこの期間中、京都国際写真祭が開催されており、ポップアートやコンテンポラリーアートを含む多種多様な現代アートで彩られるのだ。特にこの国際写真祭では、国内外による有名アーティストの貴重な作品や写真コレクションにもお目にかかれるので、アート好きにはたまらない。
当写真祭では、官能的な作品では右に出るものはいない『アラーキー』こと荒木 経惟や、人気沸騰中のポップアート雑誌「トイレットペーパー・マガジン」でお馴染みの二人組アーティスト、マウリツィオ・カテランとピエロパオロ・フェラーリ、白黒のロマンティックな写真が特徴的なルネ・グローブリ、引き込まれてしまいそうな神秘的な洞窟のインスタレーションが印象的なラファエル・ダラポルタなど、豪華な写真家達が勢揃いし、訪れた人達を彼らのイマジネーションワールドへと導いてくれた。
このように現代アートの波が押し寄せる一方で、京都特有の趣や古き良き伝統美は失われていないが魅力の一つ。それどころかこの写真祭は、芸術の都としての美しさを更に引き出していたのだ!と言うのも今回は二条城、国立美術館、古い酒蔵、日本庭園など、歴史感溢れる場所が会場に選ばれ、作品が飾られることで、『伝統』と『新しさ』が混ざり合い、なんとも言えない独特でスタイリッシュな『ヴィンテージ』感を生み出していた。
この写真祭のプロジェクトは、ルシール・レイボーズ と仲西祐介というフランス人と日本人のカップルによって始められた。2011年の東日本大震災後、言語を超えた写真というコミュニケーションツールを用いて、日本と世界を繋ぐというのが、彼らの目的だ。そして開催5年目に当たる今年の写真祭のテーマは、『愛』。このコンセプトには、『愛』を180度全く違った角度から捉えようという思いが込められている。この日仏カップルは写真という媒体を通して、国境や人種、宗教などの立ちはだかる様々な壁を乗り越え、より多くの人と『愛』を分かち合うことを最終目的としている。
さて、ここでワカペディアチームが写真祭で出会った『愛』してやまないアーティストをご紹介!
今回はワカペディアもイタリアから京都までお供をすることになったイタリア人アーティスト、マウリツィオ・カテランとピエロパオロ・フェラーリが中心となり発行しているアート雑誌。ピエルパオロがスピーチを行った二階のリビングルームは、彼らのイメージやデザインしたオブジェで埋め尽くされており、会場となったASPHODEL という三階建ての建物全体までもが彼らの作品一色に。入り口付近のショップではグッズ販売がされていた他、階段もトイレットペーパー風にデザインされ、巨大なベッドが置かれた真っ赤な部屋には、ヨーロッパのクラブさながら日本のラブホテルにもとれるようなミラーボールやダンスポールが豪華にデコレーションされるなど、存在感のある展示となった。
世界的に有名な日本人写真家の一人でもある彼の作品は必見。彼は日本社会の奥深く閉ざされたタブーを追求したエロティックな写真を披露している。今回話題をさらったのは、健仁寺という京都最古の寺院に、タブーに切り込んだ彼の作品が展示されており、格式ある伝統と型破りな芸術が交差するというパラドックスさが、なんとも斬新な空間を演出していた。
南フランスにあるショーヴェ洞窟を10年に渡り撮影した、フランス人の若き写真家。現在この洞窟はユネスコにより世界遺産に認定されており、彼はこの貴重な洞窟の内部にある約36,000年前という世界最古の壁画を360度撮影し、 4Kモニターを用いた音と映像のインスタレーションを行うなど、迫力のある作品を紹介した。
・吉田亮人
元小学校教員の写真家。妻に写真を撮り始めるべきだと勧められてから、教員を退職し、写真の道へ。新しくCanonのカメラを購入した吉田は、80歳を過ぎ体の弱くなった祖母と、彼女を献身的に介護していた弟的存在の従兄弟を写真に撮り続けた。彼等の愛おしい生活を記録した写真のコレクションは『落ち葉』と名付けられ、今回の写真祭でも大きな反響を得た。微笑ましい写真とは裏腹にこの悲しいタイトルがつけられたのは、突然、23歳の若さで理由を語ることなく失踪し、自ら命を絶った従兄弟。そしてその彼が発見されたときに纏っていた落ち葉に由来している。
・京都グラフィーサーティライト、KG+
ロンドン出身のマーク・バッサロは、ワカペディアの心を鷲づかみにした写真家の一人。花の肖像写真ともいえる『Still-lIFE』が有名であり、『FORM IS EMPTINESS』というシリーズ作品が特に印象的だ。彼の作品は生地製造を行っていた昔ながらの家に展示され、写真の中に映る繊細なモノトーンの花が、金の葉で覆われた背景にとても映えた。最も魅力的だったのは、庭園から注ぎ込む光が畳に反射し、その光が更に写真の金色に光る背景に反射することで、一日の陽の移り変わりによって、作品の表情が変わるという粋な演出だ。
Article: Elisa Da Rin
Edited: Yoka Miyano
Photo: Yvan Rodic